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株式に関する基礎(2)

知らないと大変! 会社へ自己株式を譲渡する時

経営権の安定化や相続税などの納税資金を確保するため、個人が会社に自社株を買い取ってもらう場合、
売却した個人が思わぬ高額な税金が発生する場合があるので注意が必要です。 

1〜4につきましては、こちらをご覧ください。

 

5.会社が自己株式を譲受する場合の時価とは?

非上場株式の時価は、当事者間で自由に決めることが可能です。
純然たる第三者間の売買価額は合理的な価額として税務上も是認されます。
しかし、親族等の関係者間の場合は、当事者間の都合で時価とかけ離れた取引金額が設定される場合があり、
その場合は課税問題が発生することになります。そのため、「適正な価額」の判断基準として、
下記のように、売買当事者がそれぞれに適用される税法に拠って時価が判断されます。

売主→買主 適正な株価を判断する基準
売主 買主
個人から→法人へ 所得税法上の時価 法人税法上の時価
法人から→法人へ 法人税法上の時価 法人税法上の時価

上記をみると時価の定義が一律でないですが、次の通り、「一定の条件」付で財産評価基本通達(相続税評価)を
取り入れられています。

法人税法上の時価(基通9-1-14) → 課税上弊害がない場合相続税法上の評価
  1. その法人が発行法人の「中心的同族株主」に該当する場合、常に小会社で評価
  2. 土地と上場株式は実勢価額で評価
  3. 純資産価額算定に際し、含み益に対する法人税相当額は控除しない
所得税法上の時価(基通59-6) → 純資産額等を参酌して通常取引すべき価額
  1. 同族株主に該当するかは株式を譲渡者の譲渡直前の議決権の数により判定
  2. 売り手が「中心的な同族株主」の場合、発行会社は常に小会社で評価
  3. 土地と上場株式は実勢価額で評価
  4. 純資産価額算定に際し、含み益に対する法人税相当額は控除しない

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6.自己株式取得時のパターン

株主が発行会社に対して自己株式を譲渡した場合、次の4つのパターンで税務的な問題点をご説明いたします。

 
1. 発行会社の税務 (自己株式を取得した法人)
1. 通常は、時価との差が出ても益金・損金は生じない

発行会社における自己株式の取得は、通常、資本等取引に当たり、自己株式の取得のため交付した金銭の額のうち
取得資本金額に相当する金額を資本金等の額から控除し、取得資本金額を超える金額を利益積立金の額から控除します
したがって、通常、発行会社において自己株式の取得により益金・損金が生じることはありません。

2. みなし配当で源泉徴収義務が発生

自己株式の取得は、「資本の払い戻し」として取り扱われます。株主に対して交付した金銭等の額を、
資本金等の額からの払い戻しと利益積立金額からの払戻しに区分して処理します。
区分の方法は、会社全体の資本金等の額に、直前の発行済株式総数に占める取得する自己株式の割合を
乗じて得た額を減少すべき資本金等の額とします。利益剰余金からの配当は「受取配当金」とされ、
資本剰余金からの配当についてはプロラタ(比例配分)計算により算出した一部の金額のみ「みなし配当」とし、
その他の金額については「資本の払い戻し」として取り扱われることになりました結果、
配当を支払う発行法人は、「みなし配当」部分は、通常の配当と同様に20%の税率で所得税を源泉徴収し、
徴収日の翌月10日までに納付しなければなりません。

みなし配当金額の計算方法

みなし配当金額の計算方法

自己株式の取得額

自己株式の取得額

3. 買取価格に合理的な理由がない場合は注意!

自己株式の時価と買取価格との差額に合理的な理由が見当たらない場合、その差額部分は利益移転取引と
資本等取引を抱き合わせたものと認定される恐れがあります。
その場合、買取価格を時価に引き直し、買取価格が時価よりも低額の場合は受贈益、
高額の場合は寄付金等とされるリスクがありますので注意が必要です。

高額取得

  意図的な利益移転は売主に「寄附金」を渡したとみられる場合がある 高額取得

低額取得

  意図的な利益移転は売主からの「受贈益」とみられる場合がある。 低額取得

知って得する基礎知識   寄附金の税務

寄附金とは、金銭、物品その他経済的利益の贈与又は無償の供与をいいます。
交際費と違い、事業活動に直接関連がない支出です。 寄附金は、経費の一つではありますが、
これがすべて損金として認められると、必要以上に寄附行為を行って税負担を逃れるなどの税金の公平さを
失うことになります。そのため、寄附金のうち、損金算入限度額を超える部分は、
「損金」としては認められないことになっています。
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2. 法人売主の税務(法人株主が自己株式を発行会社に譲渡する場合)
法人株主 法人→法人へ
法人売主 法人買主
低額譲渡 寄付金課税 受贈益課税
高額譲渡 受贈益課税 寄付金課税
1. みなし配当課税

法人が、自己株式取得などに伴い、株主等に対し金銭等を交付しその交付した金銭等の合計額が
その法人の資本等の金額のうち交付の基因となった株式に対応する部分の金額を超える部分、
その超える部分の金額をみなし配当といいます。
みなし配当は会社法上の配当ではありませんが、株主等に対して利益積立金額を財源として配当したことと
経済的な実質が同じであることから、税法上の規定により配当とみなし、課税することとしているものです。
しかし、法人の株主等に対しては、受取配当益金不算入制度の適用を受けることができます(法法23 ①)。
また、譲渡価額からみなし配当金額を控除した額と帳簿価額との差額は譲渡損益として扱われます。
(時価取引に引き直される場合には自己株式の時価が譲渡価額相当額とします)

2. 受け入れ資産の取得価額と移転資産の時価が異なる場合

時価と売却額との差額については低額譲渡の場合、発行法人に経済的利益を供与したものとして
寄付金として取り扱われます。高額譲渡の場合は受贈益が認識されます。 (法法22 ②)

低額譲渡

  法人株主が時価よりも低額で譲渡した場合 低額譲渡
3. 高額取得

高額取得

  法人株主が時価よりも高額で譲渡した場合 高額取得
  • 剰余金の配当のうち資本金等の額に対応する部分は、配当した法人の資本金等の額から控除し、
    株主側は、その金額中、株主の保有割合に相当する金額が株式の譲渡対価になります。
  • 剰余金の配当のうち利益積立金に対応する部分は、みなし配当として配当した法人の利益積立金から控除し、
    株主側は、受取配当として処理され、受取配当益金不算入制度の適用を受けることとなります。

知って得する基礎知識   利益積立金とは?

法人税法における"利益積立金"は、法人税の"所得計算の結果、留保された金額"として計算されたものになります。
つまり、課税上における"課税所得の計算"の過程で、内部に留保された金額が"利益積立金"として計算されます。
会計上である決算書の純資産の部に登場する"利益剰余金"というものと、法人税法上で規定されている
"利益積立金"とは概念的に似ておりますが、会計上の利益剰余金は、適正な損益計算の結果として、
経営活動の結果である"果実"を意味する金額になります。会計上は"その他資本剰余金"によって
処理されたものであっても、税務上のみなし配当の規定にかかったものは、"利益積立金の減少"として処理されます。
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3. 個人売主の税務(個人株主が株式を発行会社に譲渡する場合)
個人株主 個人→法人へ
個人売主 法人買主
低額譲渡 みなし譲渡所得課税 受贈益課税
高額譲渡 給与所得又は一時所得 寄付金課税又は役員賞与
1. 個人株主の場合には、申告分離方式

株式を発行法人に対して譲渡する等の場合には、譲渡対価のうち、「1株あたりの資本金等の額×譲渡株数」を超える
金額を「みなし配当」として計算する一方、譲渡対価からみなし配当を控除した残額、つまり譲渡株式に対応する
資本金等の額と譲渡株式の簿価(譲渡原価)と差額は譲渡損益として認識されることになります。

譲渡所得の基本公式

譲渡所得の基本公式
2. 時価の2分の1未満で譲渡した個人株主は要注意!

個人から法人への譲渡で、売買価額が時価の2分の1未満の場合、時価で譲渡したものとみなされて
譲渡所得の課税が発生します。その場合、取得した発行法人の場合も受贈益課税が発生します。

i みなし譲渡

  時価よりも低額(1/2未満)で譲渡した場合 みなし譲渡

ii (参考)時価の2分の1以上での低額譲渡

(参考)

iii 高額取得

  個人株主が時価よりも高額で譲渡した場合 高額取得

知って得する基礎知識   財産評価基本通達とは

相続税・贈与税を計算する際に対象財産の価額評価基準として国税庁が定めているもので、
非上場株式の評価方法も規定されています。 時価とは、「課税時期において、それぞれの財産の現況に応じ、
不特定多数の当事者間で自由な取引が行われる場合に通常成立すると認められる価額をいい、
その価額は、この通達の定めによって評価した価額による。」と規定されている。
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4. 他の残存株主の税務

時価よりも低い価額で譲渡すれば、売主である株主から売主以外の残存株主に経済的利益が移転することから、
株主間の取引として処理され、経済的利益を受けた法人株主には受贈益課税、経済的利益を受けた個人株主には
譲渡した株主が法人の場合には一時所得、個人の場合は、みなし贈与税課税がなされます。

他の残存株主の税務

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7.個人株主のみなし配当課税に関する特例

個人株主が自社株式を発行会社に売却した場合、通常売却価格の一部が配当所得とされ、総合課税の対象となります。
(住民税・所得税合わせて最高50%の税率により課税)。
ただし、相続や遺贈により非上場株式を取得した個人が、発行会社へ次の要件で売却した場合は、
所得税の配当課税を行わず譲渡所得等として申告分離課税とする特例が設けられています。

適用要件

  1. 個人が相続等により非上場株式を取得して、相続税を納付すること
  2. 相続税の申告期限の翌日から3年経過日までに、対象となる非上場株式を発行会社に売却すること
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8.自己株式として取得されると予定して取得した場合

発行法人が自己株式を取得されることを予定している株式を取得し、その株式が予定通り発行法人により
取得された場合には、その際に生じるみなし配当については、受取配当等益金不算入制度を適用しないこと
とされました(法法23 ③)
これは、受取配当等の益金不算入制度を利用して実質的に損益が生じないような租税回避行為を防止するための
措置として行われます。
たとえば、租税回避のため、個人株主が一旦「他の法人」に株式を譲渡し、
その「他の法人」が発行法人に、個人株主から取得した株式を譲渡する等の迂回取引を行う場合です。

ただし、完全支配関係がある発行法人による自己株式の取得の場合は適用除外となっています。

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9.100%グループ法人内での自己株式取引について

自己株式発行法人に対して株式を譲渡する場合(=取得側にとっては自己株式の取得)、
譲渡株主が法人株主であるときは、株式の譲渡損が損金算入される一方で、みなし配当については
益金不算入規定が適用されることで、節税を図ることができますが、100%グループ内の内国法人間において、
発行法人に対して株式を譲渡する場合は、株式の譲渡損益を計上されないことになりました。
(法人税法61条の2第16項)。
なお、みなし配当の益金不算入はそのまま適用可能です。

譲渡損に相当する金額

譲渡損に相当する金額

譲渡益に相当する金額

譲渡益に相当する金額
増減する資本金等の額 =(みなし配当の金額+譲渡原価(注1)) - 交付を受けた金銭等の額
注1: 税務上の譲渡対価の額と同額になります。